「あ……」


 背中越しに、わたしが行くのを引きとめようとするような気配を感じる。

 首だけ回して、振り返る。

 でももうわたしには、言うべき言葉が見つからなかった。

 だから、彼を見つめた。まっすぐに。

 そして彼がたくさんわたしにくれた表情を、わたしはした。

 彼から見て、わたしは、微笑んでいるだろうか。

 

 そう見えたらいいなあと、思う。