でも、この学校でわたしを下の名前で呼ぶ人が、いるだろうか。

 いや、いない。

 女性の声ではなかったから、松本先生ではない。

 空耳か。

 そう結論づけて、わたしは再び緊迫している現場へと戻ることにする。

 それなのに。


「なぎこってば!おーい!」


 またもや聞こえる。


少しばかり怒気を含んだそれは、

 空耳なんかじゃない。