「手、出して」


 先生は机の引き出しから、

 小さなかわいい缶を取り出すと、蓋を取り、

 中から金平糖をいくつか拾い、

 わたしの手に乗せてくれる。


「はい、凪子ちゃんはいつも真面目に仕事をしてくれるから、そのお駄賃」


 他の子には内緒よ、と言いながら、

 母親が子どもに、「静かにしなさい」とするときのように、

 人差し指を口にあてる動作をする。


 わたしは先生と、より仲良しになったような気がして嬉しくなり、

 自然と笑顔がこぼれる。



 ありがとうございます、と丁寧にお礼を言い、


 下校の挨拶をし、


 その場を後にした。