「下の名前で、呼んでほしい」 ……あれ?これと似た言葉、いつだったか聞いたことがあるような気がする。 あのときは、どきどきと激しく鼓動する胸が一瞬止まったような気がしたが、今度は違う。 止まるのではなく、激しく動き出した。 早鐘を打つ胸が、苦しい。 でもきっと、顔は、あのときと一緒だろう。 「だめかな……」 なかなか呼べずにいるわたしを見て、彼はさらに肩を落とす。