しばらくして、松本先生は産休に入った。

 男の子かな、女の子かな、とわたしたちはときどき話す。

 松本先生の話をするときに、彼はもう悲しい顔をしなくなった。

 傷が、癒されているのだと、わたしは思いたい。

 図書委員の仕事でたびたび松本先生にわたしは会っていた。始めこそきまずかったが、さすがに向こうは大人で、空気の入れ替えが上手だった。

 今日も屋上で、ベンチに座ってごはんを食べる。

 あいかわらず鳥海くんは人気者で、なかなかふたりだけになれることはなかったが、この屋上だけは別だった。

 常に、ふたりきりだった。