そしてわたしは、そんなことがあったあの日から、意識を現在へと戻す。

 授業をさぼって屋上でベンチに寝転びながら、春から夏へと変わる清々しい風を頬にうけ、考えを整理していたんだった。

 ここへ来て、よかった。

 あのときのことを、冷静に考えられた。

 こころを静めてゆったりとした気持ちで風を感じていると、屋上と屋内をつなぐ扉があけられる音がした。

 教師か、と一瞬焦ったが、言い訳なんていくらでもある、と思い、体を起こさずに、そのままでいることにした。

 足音はわたしのすぐ近くまでやってくる。

 腕で目を覆っているため、それが誰だかわからない。

 何者かは、そんなわたしをしばらく見下ろしていた。

 だが、その者はわたしが動かないことを知ったのか、目を覆っているわたしの腕を掴んで引っ張った。