ここは静かで、そう、とても静かで、まるで自分しかここにはいないような錯覚に陥ってしまう。

 夕日の差し込む窓の外からは、野球部とかサッカー部とか、グラウンドを使う運動部が練習している声が聞こえてくる。

 満開の桜の木がある校庭で、それぞれの大会を目指して頑張っているのだろう。

 たくさんの声が、聞こえてくる。

 それでもやはり、ここは静かだ。

 耳をそおっとそばだててみると、本棚のあちこちからささやき声が聞こえてきそうなくらいに。

 わたしが生まれる前から存在している、数々の本。

 彼らは、もしくは彼女らは、この静かな場所で、きょうは誰に自分の話を聞いてもらえるのか夢を見ながら、いきいきと生きている。