不安定帰路【短編】


「なあ、好きじゃなくてもいいから、俺と付き合わない?」



覗き込む瞳はしっかり私を捕らえていて、そらせない。



まるで金縛りにでもあっているよう。



「特別って好きに変わると思うんだけど」



俊樹の手が、私の頬を包んで親指で涙の後をなぞる。



私も、進むべきなんだと思う。



触れられた頬が熱い。



真っ直ぐな瞳に鼓動が鳴り止まない。



これは……特別だから?
それとも、他の何か?



「じゃあ、変えてよ」



特別を好きに変えて。



「好きって特別と何が違うか知りたい」



冬の冷たい風邪が耳を麻痺させる。



小さく「いいよ」と呟いた彼の口が優しく唇に触れた。



手を握られ、無意識に強く握り返す。



………好き。



一瞬、彼をすごく愛おしく感じた。



私の気持ちは、まだ不安定のまま。





end.


2012,2,21