「あぁ…やっぱ前言撤回するわ」
「え……?」
「俺が、敦司を忘れさせてやるよ」
「……。。」
「自信、あるよ」
「何それ…そんなのわかんないじゃん」
───ギュッ…
また……強く強く、私に思いを伝えるかのように、
鳴海は私を抱き締める。
「…頼むから、もう悲しい顔しないでよ」
「え……」
「敦司を見る真綾は、いつも悲しい顔してる。」
……見てたんだ。
「もう耐えられない。やっと話せた。想いを伝えた。もう止められない。」
…何でそんなにも哀しい目で私を見つめるの。
…何でそんなにも哀しい声で私を惑わすの。
「俺を好きになって」
あぁ…、もう放っておけない。
里菜の約束破っちゃうね…。
鳴海で敦司を忘れる。
……敦司、ごめん。
忘れてみせるから。
「わかった。付き合おう」
そう言った瞬間、鳴海と…キスをした。
6月の、夕方の雨に包まれる教室で。
敦司が見ているのも、涙を流したのも知らずに…。

