『じゃあ優子あたしこっちだから』

「うん。
拓海にちゃんと聞きなよ?」

『わかってる』

「ふうん、じゃあね」

『うん。バイバイ』
あたしは優子と別れ、路地の方へ曲がった。

拓海も家が隣りだからここを通る。

あたしと拓海の足音だけが狭い路地に響く。

なんか気まずい…

そう思っていたら拓海の足音がどんどん近づいてきた。

そして拓海の手があたしの髪をクシャっとした。

『なによ?』

「今日の夕飯作んないで空けておけ」

『なんで?』

「なんでも」
そしてまた拓海があたしの髪をクシャっとした。

変な奴…

『ねぇ、それ癖?』

拓海はあたしの背を
抜かしたころからこうしてくる。

「さぁ」

『さぁって…
本当意味わかんない』

「だれが?」

『拓海』

「どこが?」

『今日だって「あれは笑えた」
拓海があたしの言葉を途中で遮った。

「俺がステージに上がった瞬間の
お前の顔…」
ククッと拓海が笑う。

は?
見てたの?

『だって普通びっくりするじゃん』

「ビビったんだとしても全校生徒の注目浴びるほどデケエ声出さねぇだろ。

お前本当見てて笑える」

ひどっ!

『そこまで言うことないじゃん。拓海のバカ』