そんな会話をしているうちに、西校舎の非常口まで辿り着いた。

「ドア開けてくるから待ってろ」
拓海はそう言い残し、ドアの方へ向かった。

夜の児童玄関なんか開いているわけがなく、あたしと拓海は鍵がいつもかかっていないという非常口から入ってきたのだ。

西校舎には図工室と家庭科室くらいしかないので普段はあまり使わない。

だから非常口があったことさえも【今日までは】知らなかった。

拓海が
「西校舎の非常口の鍵はいつもかかってないからそこから忍び込む」
などと口にしなければ卒業するまで知らないままだったと思う。


あたしがこんなことを考えている間、なぜか拓海はドアと奮闘していた。


何してんの…?


『もしも~し拓海さ~ん』

「………。」

『聞いてますかぁ~』

「…なくなった」


…なくなった?

『何?もう一回』








「ドアが開かなくなった」

え…?

いやいや、そんなことあるわけないよ。
だって入って来た時は開いてたんだし。

ましてや拓海のことだ。

『さては拓海くん、あたしを怖がらせようとしているね?』

あたしは拓海の冗談を見透かしたように言った。


すると拓海が溜め息をつきながら
「じゃあ開けてみろよ」
と言った。



とりあえずあたしはドアの方へ向かった。

そしてドアノブに手をかける。







マジで開かないんだけど。

『じゃあ、東校舎の非常口から出ればいいんじゃない?

あそこもいつも鍵開いてるし』

「渡り廊下の鍵が閉まってるから行けねぇだろ」



じゃあ学校から出られないじゃん…



今日は先生達みんないないけど、明日は始業式前日だから…


絶対見つかる…!!


ある意味泣きたくなってきたよ…

って本当に涙出てきちゃった。

『ゴメン、ちょっとトイレ』

あたしは拓海に涙を見られないように、西校舎には一箇所しかないトイレに向かった。