ここは月見星。

彼女はこの星の姫メージェシック・グレダンジャ。

今向かっている先は大福星。

許婚のヴェリキ・フー王子に呼ばれ、会いに行くのだ。

「お父様、ヴェリキ王子はお行儀が悪くて好きませんわ。」

「こら、そんなことを言うものじゃないぞメージェ。彼にはだらしない才能があるんだ。」

「・・・・まったくフォローになってませんわね。」

いいかげんな会話を続けていると、遠くから誰かが手を振った。

「メージェ!!迎えに来てやったぞ!!」

大声で叫ぶ気品のない彼こそ、大福星の王子ヴェリキなのだ。

「気安く私のことをあだ名で呼ばないでもらえませんか?」

メージェは殺気立って船から下りて、王子の胸倉をつかんだ。

「ま、まあまあ。」

「だいたいこのような場所に呼び出したりして・・いったい何事ですの。」

「まるで何もなかったら呼び出しちゃいけないみたいな言い方だな。」

「当たり前です!!」

そう言ってそっぽを向いた。

「まあ、用はあるんだがな。」

ヴェリキはタッチパネル式のPCを出してある映像を見せた。

そこには商店街、公園、遊園地などが写っており、まるで監視カメラのような映像だった。

メージェはきょとんとした表情で、

「これは・・なんですの・・・?」

と質問した。

「地球だけど?」

「何故私にこの映像を・・・。」

「ここに行くからだろ?」

「・・・へ?」

すると突然宇宙空間であるはずの場所にブラックホールが現れた。

ヴェルキはメージェを抱きかかえると、その穴へと飛び込んだ。

「な、何をするのですかっ?!」

「俺らの新婚旅行だろ。」

笑顔でそう言った。

ブラックホールに飲み込まれる直前、メージェの父は気まずそうに手を振った。

「お、お父様はグルだったのね・・・。」

メージェはぶつぶつと呟きながら、ずるずると闇に吸い込まれていった。