秘密の舞台




そのまま二人は急いで学校を出て、事務所を目指す。


その途中で何度も生徒や先生、入学式に出席していた父兄に呼び止められたので、普通の倍以上の時間を掛けながら、外へ出た。


「はあ、時間食った!」


「断れないからキツイね」



学校を出た二人はすぐに校門から離れ、人に見つからないように近くにある家へ入った。





―――そこは二人の所有している隠れ家。


二人はそこで制服から私服に着替え、変装をして会社や事務所へ行く。


これが正体のばれない仕掛けの一つ。



二人は家に入ると迷わず二階へあがり、一番奥にある部屋へ入った。


その部屋はウォーキングクローゼットになっていて、左右の壁にはズラリと様々な物が置いてあった。


悠稀は右からジーパンとTシャツを取り、唯織は左からジーパンとタンクトップを取り出すと、奥の小部屋で素早く着替えた。


着替えが終わると御揃いのジャケットを羽織り、急いで一階へ降り玄関から外へ出た。


唯織は長い髪を帽子で隠しながら悠稀にサングラスを渡す。


「悠稀、サングラス忘れてる!!」


「ヤベッ!ありがと」


「早く行くよ!後10分しかない!!」


「走るぞ!!」


凄く慌てながら二人は本気で走り出す。


全力疾走で街を駆け抜ける二人に道を歩く人々は何事かと注目するが、振り返った時にはすでに二人の遠い後ろ姿しか見えなかった。



隠れ家からずっと走った二人は事務所のあるビルが見えると走るのを止めて、歩きながら息を整えた。


「ハアハアッ間に合った」


「疲れた~」


ビルの前まで来た二人は変装用のサングラスを外して、ビルの中へと入っていった。