そんな俺を見て彼は歌うのはやめずに、だがその変わりに歌う声はもっと低くなり、俺の方へと歩み寄る。 ……――健祐君。 誰も呼ばない俺の名前をしっかりと呼ぶソイツは顔が次の瞬間には変わっていて。 怖い―――…。 俺はそう思ってしまった。 だが、本当にそうとしか思えなかったのだから仕方がない。 表情が変わったわけではなく、顔が変わったのだから。 そして、その表情はとても暗く、見たことがないほどに無表情なもので、だが口元だけはくいっとあがり、笑っているように見えた。