冬晴れ、澄んだ青空が広がっていた。
 人々は年初めで気忙しく、会社に、学校に、どこかに急ぎながらお互いにぎこちない年始のあいさつを交わしている。
 そんな人間たちの様子を黒猫は塀の上から眺めていた。
(俺は猫だから年末年始とか関係ねえな)
 猫は塀の上をのっそり歩き、特にあてもないまま気まぐれに林の中に分け入った。枯葉の中に隠れていた小鳥が突然の来訪者に驚き飛び立つ。
 林を少し進むと猫は小さな稲荷神社にたどり着いた。