「うー……さっむい!なんなの、この寒さー」


大きな体を縮めて手をすり合わせながら現れた男は、頭に雪を乗っけていた。


……雪?

なんで?

確かに寒いけど……なんで一人だけ雪?



私や他の従業員、お客さんが凝視するのにも構わず、雪を乗っけた男・スノーマンは窓際の太陽が降り注ぐ席を見つけると腰を落ち着けた。


「店内あったかいねー。はぁー……」


まるで周りの人へ賛同を求めるかのように大きな独り言を言うと、幸せそうに息を吐いた。


「雪山から下山してきたのかな?」


チサが私の耳元でボソリと呟く。

登山してきた割には手ぶらだし、服装だって作業着。


「ちょっと……私、行ってくる!」

「え?な、菜月、休憩は……!?」


チサが代わりに行ってくれようとするのも無視して、私はメニューと水を持って彼に近寄った。