私が二人の近くを通りかかった時、蓮さんが唐突に声を掛けてきた。


「ね、菜月ちゃんは見てくれた?」


ちゃんと私の名前……覚えてくれてる。


「どうだった?感想教えてよ!」


子どもが母親に100点のテストを見せて褒められるのを待っているみたいに目がキラキラしている。


「すごく……綺麗だと思いました。道を歩いてる人、皆が足を止めてみてましたよ」

「マジで!子どもだけ狙ってたんだけど大人もいけんのね」

「あぁいうの、大人の方も好きですよ。特に女の子は」

「菜月ちゃんも好き?」

「す……好きですよ」


照れくさくなって目を逸らしながら言っていると「ふーん、メモっとこ」なんて蓮さんは呟いた。


「私も好きですよ!いいですよねー、気分が盛り上がってー」


チサも話しへ加わる。


……違う。

二人の会話に加わったのが私だ。



私はお客さんに呼ばれたフリをしてその場から離れた。