睨み合うわけでもなく、ただお互いの顔を見つめるだけ。そんなあたしたちの間を、数人の男子がはしゃぎながら通り過ぎていく。

「何?」

いつまでもこうしていたって、と声をかけるあたし。

無表情で訊ねると、結衣ちゃんは少しだけ視点を下げた。

「ごめんね、亜矢ちゃん」

何を言い出すのかと思えば、いきなり謝られた。何に対しての言葉かは、訊かなくても大体わかる。

返事をせずに黙っていると、彼女はひとつにくくった髪の、肩に乗った部分を指でといた。

「あたし、イヤな思いさせたよね。……でも、真由美を奪うつもりなんてなかったの。……あたし、亜矢ちゃんには受け入れられてない気がしてて、喋りやすい真由美のほうにばっか話しかけてた」

「……」

語られる気持ちは、さっきトイレの中で感じていたもの。

なんて返そうか考える。けれど、今の気持ちを言葉で表すのは難しくて。

そうしている間に、大きな音で校内放送が流れた。