「ねぇ……あの子たち、様子が変じゃない?」

お弁当箱のフタに置かれた焼き魚を口にしたとき、真由美がよそのグループを見て、つぶやいた。

「ん?」

次に食べるつもりのおにぎりを、箸でひと口分に割りながら、真由美の視線を追ってみる。

「……ほんとだ」

廊下側の席で食べている奈美ちゃんたち4人の空気が、明らかにいつもと違った。

普段なら、この時間はあの子たちもうるさいくらい騒ぐのに、今日はやけに静か。

誰ひとり顔を合わさず、黙々とお弁当だけを見ている。

「ケンカでもしたのかな?」

「かもね」

じろじろ見るのは悪い気がして、目が合う前に視線を戻した。けれど、真由美はまだあの子たちのことを気にしてる。

「大丈夫かなぁ」

真由美のこういうところ、嫌いじゃないけど、ちょっと苦手なんだよね。

あたしは「他のグループのケンカなんて、どうでもいい」って考えちゃうほうだから。