用もないのに立ち寄った、トイレ。水道の水を無駄に流して、飛び散る水滴をぼんやりと眺める。
いってらっしゃい、と微笑んでいた真由美。
「なんでついてこないの?」
いつもは、あたしも、と言って一緒に来てたのに。
「……」
あの子がいるからだ。
結衣ちゃんがいるから、真由美はあたしが離れても、ついてこない。
こんなのイヤだ。
あの子がいると、全然楽しくない。
放課後、この時間だけは真由美とふたりになれる。
学校を後にして、他の生徒の姿も見当たらない畑道まで来たとき、あたしは歩くのをやめて、真剣に話しかける。
「結衣ちゃん、あの子たちと仲直りする気ないのかな?」
真由美の気持ちを知りたかった。このままでもいいと思ってる気がしたから。こんな言い方をしたのは、あたしはそんなふうに思ってないよ、ってことを伝えるため。
振り返った真由美は、きょとんとした顔であたしを見てる。その表情からして、あたしたちの気持ちは違うんだろうな、ってことがわかる。
「んー……なかなか難しいんじゃないかな。奈美ちゃんたち、まだ怒ってるようにも見えるし」



