「いいじゃん。食べて食べて」

「もー! 太ったら、真由美のせいだからね」

あたしのお弁当箱を手に取り、隙間にキライな物を詰めようとする。

そんな真由美に呆れたふりをしながら、結衣ちゃんがいることを認めた。でも……。

「真由美ちゃん、ホタテ食べれないの?」

話の途中で、結衣ちゃんが割り込んできた。

「うん。あたし、魚介類が苦手なの」

「えー、美味しいのに!」

スムーズに進まない会話。こんなちょっとしたことでも、イライラしてしまう。

早くいつものやり取りに戻りたいから、ふたりの話には入らない。そんなあたしの耳に入った、結衣ちゃんの次の言葉。

「じゃあ、ちょうだい! あたし、ホタテ大好きなんだぁ」

え、と思った。だって、キライな物を食べるのは、あたしの役目なのに。

「ホタテ美味しい! えー、じゃあ、魚介類は全部ダメなの? イクラも?」

人のお弁当箱に箸を入れ、あたしの意見を聞かずに、勝手にホタテを食べた結衣ちゃん。

「うん、ダメ。あ、でも、エビフライは食べれるの。揚げてるから」

「あはは! 何それ~」

あたしに食べさせようとしてたくせに、簡単に結衣ちゃんにあげた真由美。

「……」

やな気分になった。

ふたりの話、静かに聞いているけれど、多分、いまのあたし、顔がひきつってると思う。