発明王ショート

 成瀬はショートの言葉とポーズにどん引きし、美しい顔が歪む。


「死者と交信って……エジソンと話でもしたいの?」


「おお、それナイスアイディア! でも違うよ。……5年前、ぼくの父さんが死んだんだ」


「え……発明家だったっていうお父さん?」


「知ってるの?」


「噂で眞森君は親も発明家だって聞いてたの」


「誰がそんなこと言いふらすんだろうか」


 ショートは自衛隊のポーズをやめて、シリアスモードに入った。


「家が火事になって、そのとき電気自動車の研究中だった父さんは火事に気付くのが遅れて、そのまま死んだ」


 拳をぎゅっと握り、歯をかみ締める。


「その日はたまたまぼくが家にいなくて、父さんだけだったのに、火事が起こるなんて考えられない。だから……」





「父さんは、殺されたんじゃないかと思うんだ」





 ショートの唐突な言葉に、成瀬は戸惑いを隠せない。


「殺されたって……そんな……」


「実際どうだったのか、今じゃもうわからない。事故で片付けられちゃったからね」


 ショートは悔しさを押し殺して、穏やかな表情に戻る。


「でも、死者と交信する機械を発明できたら、父さんに話を聞くことができる。だからぼくは発明したいんだ」


「そっか……お父さんも優秀な人だったの?」


「うん、かなりお金は稼いでて、趣味だった映画にお金を注いでたくらい。母さんが死んでから、真剣に発明をやり始めたみたい」


「え、お母さんも死んでるの?」


「うん。母さんはもともと体が弱かったんだけど、父さんが初めて成功させた発明品を、開発した直後に死んだって」


 成瀬は何も声をかけることが出来ず、じっと、ショートを見つめた。