発明王ショート

「これが発明品! 名付けて『草むしりくん』だ!」


『草むしりくん』は、1mほどの棒の先についた、ふたつの半円形のはさみでかしゃかしゃと挟む「マジックハンド」と、農家のおばさんがよく付けている「腕当て」を組み合わせたものだ。


「マジックハンドの先に、腕当てをつけたおかげで、どんなに草むしりをしても、絶対に手は汚れません。わははは」


「……それ、逆に大変じゃない?」


◆◆◆


 あまりにも効率が悪かったので、『草むしりくん』は諦めて、ショートは真面目に草むしりを始めた。

成瀬は壁に寄りかかりながら、その様子をぼんやり眺めている。


「ねえ、眞森君」


「ん?」


「なんで理科だけはそんなに得意なの? 噂によれば、他の教科はひどいもんらしいじゃない」


「誰がそんなこと言いふらすんだろうか。……成瀬さん、エジソンって知ってる?」


「私をバカにしてるの? 発明王、トーマス・エジソンのことでしょ」


 ショートは草むしりの手を止めて、願いを込めるように、右手にぐっと力を入れた。


「そう、そのエジソン。ぼく、エジソンを超えたいんだ」


「何、エジソンを超えるって? エジソンよりもたくさん発明をするとか? たしか1300個だっけ」


「それもそうだけど、1番はそれじゃない。エジソンってさ、後半生は死者と交信する機械を発明しようとしてたんだ」


「あ、それ聞いたことあるかも」


「発明王とまでいわれたエジソンでも作れなかったんだから、作るにはエジソンを超えるしかない」


 ショートは立ち上がって、人差し指を太陽に向けて腕を伸ばし、自衛隊の勧誘ポスターのようなポーズをとった。


「ぼくは、死者と交信する機械を作りたいんだ」