「そう、『代返くん』。つまり、ぼくの代わりに返事をしてくれるってこと。音楽プレーヤーに、音声認識機能をつけたんだ」


 ショートは頭まで筋肉の田井にもわかるよう、机の上に絵を描いて説明する。


「“マモリ”っていう言葉に反応して、あらかじめ用意しておいたぼくの“はい”っていう声が流れるようになってるんだ」


「フーン、スゲーけど、ただプレーヤーと音声認識機能をくっ付けただけか。ショートの発明ではないジャン」


「なにを言うか! オリジナリティっていうのはね、組み合わせから生まれるんだよ! これもちゃんとぼくの発明品だ!」


 ショートは自慢げにそこまで語ったが、その結果がどうなったのかを思い出して、真っ白な灰になった。


「ま、結局失敗だったけどね。同じクラスに『マモリ』が二人いたの、すっかり忘れてた」


 ショートの周りにはどよーんとしたオーラが溢れている。

田井はちょっと引きながらも、ショートを元気付ける。


「でも、失敗は成功のもとだろ。ショートが大好きなエジソンもそんなこと言ってたみたいジャン」


「そうだね。代返くんも、ちょっと改良すれば使えるようになるはずだよ」


「よし、元気になったな」


 田井は突然うきうきとしたオーラを放ちだしたショートにちょっと引きながら、ポケットから機械を取り出して、ショートに見せた。


「じゃあもう少し元気になってもらおうか。実はな、ショートに聞かせたいもんがあるんだ」


「ボイスレコーダー?」


「そう。ほら、オレってアニキがいるジャン?」


「知らないけど」


「そんで、アニキの部屋に入ろうとしたら、エロい声が聞こえてきたワケ」


「知らないけど」


「でも、オレのアニキって、彼女いないジャン?」


「知らないけど」


「そんで気になってドアをソーっと開けてみたワケよ。そしたらさ……コレ、あんま大きい声では言えないんだけど……」


 田井はショートの耳元に口を寄せ、声のトーンを落としてささやいた。


「星野先生がAVに出てたんだ」