『ん―…』

俺の脇腹に
スリスリ擦り寄る
小春ちゃん。


ちょ…

『は…離れろよ』


今度は俺が
馬鹿みたいに赤くなる。


『ここ…家だぞ』


俺は
小春ちゃんの肩を持って
引き剥がした。


『えぇ―…』


小春ちゃんは
頬を膨らます。


『直樹くんだって強引にうちを抱き締めたくせにぃ…』


『………』


そう言われると…

そうなんだけど。


ばつが悪く
小春ちゃんを見ると


小春ちゃんは
少し上目遣いで
俺を見つめていた。


小春ちゃんの
薄茶色の目が

夕日でさらに
透き通る。


小春ちゃんの
表情や言動に


俺だって

内心いつも
どきりとする。


表情は変えないけど…。

俺の変なプライド。


俺も小春ちゃんを
見つめかえす。



あとどのくらい

こんな風に
見つめ合うことが
出来るだろう…



俺の視線に

小春ちゃんは
頬を染めた。


『直樹くんデートしよ…』


『…デート?』


小春ちゃんは頷く。


『家があかんなら
外ならいいやろ?』


小春ちゃんは
切ない目になる。


『直樹くん…もうすぐ帰っちゃうやろ…?』


そのまま俯く
小春ちゃん。


そうか…

小春ちゃんも
感じてるんだよな…


ってか感じるよな。


俺と同じで…


俺は壁のカレンダーを見た。


帰る日に
さりげなく印がしてある。


今頃気付いた。


『…いいよ』


俺は不安そうな
小春ちゃんの頭に

優しく手をのせた。


『デートしよう。』