汗をかく
冷たいペットボトル。


かすかな絵の具の
独特の匂い。


開けられた窓の外では
蝉が鳴く。


美術室の木製の大きな机に
俺は寄り掛かった。



そんな俺をみて―…


蝉に負けないくらい
キャアキャアと騒ぐ

美術部員たち…



『ちょッ!!!!光様!?』

『小春っどゆことやねん!!!』

『まじで説明しいな!!!』

『うわぁ…めっちゃ光やし…』


そ…そんなに…似てるのか?


もう苦笑するしか
出来ない俺。



小春ちゃんは、というと

そんな俺の横で
なんだか得意げに
鼻を高くしている。



美術部は全部で
10人くらい来ていた。


次々と指を指しながら

『夏美とユカと渚と―…』

小春が
適当な紹介をしてくれる。


ほぼ女子だけど
少し離れた机に男の子も
1人いた。


イーゼルを立て
黙々と油絵を描いている。


俺の視線に気付いた小春が
その男子を指差した。


『あれはマキ君だよ―』


小春の声に
その男子がこちらを向く。


品よく整った顔立ちの
イケメン君だ。


俺と目が合うと―…


ジロッ

と、睨んで
また黙々と描きだした。


な…なんだ?


美術室で
唯一の同性だと思ってたのに…

さっそく嫌われた?


小春ちゃんは友達と
キャイキャイ騒いでいる。


『あのぉ…モデルしてくれはるんですか?』


渚という子が
頬を染めながら聞いてきた。


『うん、それで来たからね。
今日はよろしく。』

俺が微笑み返すと
渚ちゃんは真っ赤になってしまった。


そんな俺と渚ちゃんを

小春ちゃんが頬を膨らまして見ているのが見えた。


ぷ…

小春ちゃんて
まじで分かりやす…


こんなことで拗ねたのか…


小春ちゃんは
しばらく俺に寄って来なかった。


そのくせ…

チラチラ俺を見てるの
丸わかりだっつーの。