おかしい、と思う。
高校に入学してから、俺は七瀬を見るたびずっとこんな調子だった。
俺はもっとバカをするキャラなはずで、さっきだって、周りの目なんか気にせず佐原とバカをやっていたはずだ。
そう、七瀬が来なかったら…。
ブンブン、と俺は頭を振った。
「ところで佐原、お前何しに来たんだよ。お前が昼休み以外にわざわざ来るなんて珍しいし」
「え?あ!なぁーんだ、村上は準備いいなぁ」
佐原はバシバシと俺の肩を叩いた。
「は?なんの事だよ」
俺は眉間にしわを寄せる。
「生物の教科書!忘れちまってなぁ。やー助かる助かる」
佐原はそう言うと、俺の手から生物の教科書を奪おうした。
「な!?だめだっつの!次こっちも生物なんだよ!!」
俺はそう言って教科書を佐原の手から取り上げた。
一瞬の沈黙。
「早く言えよーーー!!」
絶叫と共に、佐原は他クラスへと走って行った。
「頑張れよー!」
俺は一人笑いながら叫んだ。
廊下にいた数人が、バカでかい声を出した俺をチラチラ見た。
高校生になってもこの調子。
中学の時から、俺は変わらない。

