「つぅか…。転校生なのに一戸建て?」

帰り道に、私は黒木くんの家に行った。

ちょっと古い感じはするが、いかにも<日本の家>って感じがする。

と…まぁ、たどり着いたのは良いけど。
どうしよう…。

しかも、担任の奴…通知表や宿題まで渡してこいとか言うし…。

ここは、やっぱ普通にチャイムを押して…いや。待て待て、家の人が出てきたら…。

「…暁さん?」

「ぅぎゃぁ!」

突然の声に、心底ビックリした。

「く…黒木くん!」

土で汚れたTシャツに、首からタオルを掛けている。

「この暑い中、さっきから何してるの?」

汗を拭きながら言う。

「えっ!私、そんなに前からいた!?」

「俺が見つけてから、10分くらいたってるけど。」

そんなに考え込んでたのか…私。

「うちに何か用?」

「えっあっ!違うの!私、ストーカーとかじゃなくて!」

うわっ。私何言ってんだろ…。

「かかか…課題が…。」

く…口が回らない!

「美術の…課題。私、似顔絵です!……違う!似顔絵を書きに…。」

もうヤダ。最悪。絶対、不審者だと思われる。

「あぁ。そういえば、さっき先生から電話があった。」

もっと早く言って欲しかった…。

「俺今こんなんだし、家入って待ってて。」

「え!?」

「すぐ行くから。」

そう言って黒木くんは、スタスタとどこかへ歩いて行ってしまった。

普通、案内くらいしない!?信じらんない!

家入って待っててって…。そんな不法侵入みたいな事出来ないよ!