「おはよー!」

次の日。
アパートを出ると里桜が立っていた。

「お…はよ。」

ビックリしたやら、気まずいやらで声が上手く出てこない。

「はい。」

里桜は私の鞄を渡してきた。

「昨日、学校に置いてったまんまだったから。」

「ありがとう。」

里桜はニコッと笑う。

「ところで、転校生くんと何かあったの?」

「え?」

ドキッとした。
てっきり黒木くんが話していると思ったから。

「問い詰めたんだけどさぁ、結局言わなかったんだよね~。あいつ。」

…言わなかったんだ…。

「だから、今日もう1回問い詰めてやろうと思って!」

「ダメ!」

「え?」

「私も…悪かったし…。もう気にしてないから。」

歯切れ悪く言う私に、里桜は少し複雑な顔をした。

「…そう?」

里桜の話によると、黒木くんは先生に聞かれても何も言わなかったらしい。

私は不思議だった。

周りから見たら、私が勝手に怒って、勝手に帰ったように見えていただろう。

適当に私のせいにすればよかったのに…。