「暑い…。」

夏休みも目前に迫った6月。
校庭の木々は、青々と輝いている。

「琴子…女らしくない~。」

オデコに、氷の入ったビニール袋を乗せていた私に、里桜が言う。

「女らしくなくていい…。干からびる…。」

クーラーの無い教室は、まさに蒸し風呂状態だ。

「あ~か~つ~き~!」

里桜とは違う声が聞こえる。

こっ…この声は!

「げぇっ!先生!」

慌ててビニール袋をずらした。

「学級委員が何やっとるかぁ!」

「すいませぇん。」

「まったく…。ほれっ!」

先生は私の机に、ぶ厚いB5サイズ位の茶封筒を置いた。

「黒木に渡しといてくれ。」

「え…えぇ?」

「あと!これは没収!」

先生は、茶封筒を押し付けて、私の大切な氷入りのビニール袋を持っていってしまった。

黒木くんは、相変わらずクラスの誰とも関わりを持っていなかったし、クラスのみんなも関わらないようにしているようだった。

私はというと…。
あの図書室の出来事から黒木くんを避けるようになった。

確実に嫌われていると思ったし、これといって、接点もなかった。

でも…この状態は。
絶対に話をしなくちゃいけない…。