「ここでいい。」

葉子の家まではまだ少し距離がある。

「葉子のくせに俺に遠慮してんのかよ。」

「んなワケ。久しぶりに歩いてみようって思っただけ。」

ダイエット?
…危うく口からこぼれそうになるのを必死でこらえる。


「珍しい。じゃあとりあえず荷物だけ先に送っとくよ。」


「サンキュ。あっ、ねえ、モモ。」


自転車を降りた葉子が
不意に弱々しい声で呼び止める。


「どした?」


「あの…いや、何でもない。」


「何だよ?まあ無いならいいや。」


「荷物玄関入った所に置いといて。」


「了解。風邪ひくから早く家に帰れよ。大分暗くなってもきたし。」



「分かってるわよ。可愛くて華奢だから誘拐されちゃうかも。」


その心配は無用だよ…


「はいはい。じゃあ先に帰っとく。」

「うん。今日はありがとうね。」


「らしくない。また今度連れて行ってやるよ。」


「期待してる。じゃあ、またね。モモ。」


「おう。また明日な。」


そう言い残して私は葉子に背を向け進み出した。

「…また、明日。か。」