先ほどまで頭上にあった太陽は進路を西に変えてオレンジ色の哀愁を漂わす。辺りはもう薄暗くなっていた。

さんざん買い物に連れ回された挙げ句、「お金が足りないから貸して」などと訳の分からない事をぬかしだす始末。


見事に予想どうりだ。


しかし今日葉子の買い物に振り回された事は大して嫌ではなかった。


どうも私は人付き合いが苦手なもので、大学に入学してからは友人と呼べるのは恥ずかしながら
葉子とあと数名だけだ。
その数名は皆病弱であり
昨年の8月から一人、そして翌9月から二人大学を休学している。


なんと淋しい男なのだ。

話相手が幼なじみだけだとは。


「なにボーっとしてんのよ。」

私の財布から羽ばたいていった諭吉で買った化粧品でメイクを済ました葉子が缶ジュースを片手に持ち店から出てきた。

「今日付き合ってくれた
お礼。」


「飯でも奢ってくれるかと思った。」


「いらないならいいわよ」

「なんでだよ、ありがとう、貰っとく。」


「最初から素直に喜べばいいのよ。さ、帰りましょ?」

「了解。」

ペダルをこぎ出す私の
後ろで葉子は何か呟いたが私には何を言ったか
聞き取れなかった。