「この坂上るのこんなにしんどかったかな?」

「死にたいの?」

心の声がよもや実声として出るとは。
後ろからかわいい人喰虎が今にも喉元に飛びかかって来そうである。

「俺の体力が落ちたって意味だよ。」


「今の言い方なら私が重いみたいじゃない。」


ご名答。良く良く分かっていらっしゃる。


「で、どこ行きたいの?」

「とりあえず化粧品きらしたのあるからそれを買うのと、あとは香水も新しいの買いたいし。」

「葉子もちゃんと化粧するんだ。」


「あんた本当に死ぬ?」


「冗談に決まってるだろ。」

今日はどうやら口が滑ってしまうようだ。

「あんたが言うと本気にしか聞こえない。」


半ば本気ではあるが。


「じゃあこないだ出来た店行くか?」

「あ、いいじゃんいいじゃん。行く暇なくてまだ行けてなかったし。たまにはいい事言うじゃん。」


自ら墓穴を掘ったことを今更後悔しても遅い。
私が荷物を持つというのに。いや、持たされるの間違いだ。


「じゃあ決まり。そのかわりちゃんと奢れよ。」

「分かってるって。」


端から見れば仲睦まじい恋人同士に見えるであろう。

恋人?奴隷の間違いだ。