「あ、柚葉。今日1限体育だっけ?」

 いきなり話を振られて驚いた私が口を開く前に取り巻きの女の子の中の1人が「そーだよぉ」と甘えた声で返す。びっくりした。
 両手に鞄を持ちながらもなんとか上靴に履き替え、歩く速度を変えない真紘を一生懸命追いかける。


 私だって、好きでコイツの鞄持ちをしてるわけじゃない。
 ただ理由もなく真紘の横を歩いてたら嫉妬した女子から激しい攻撃(口撃とも言う)を受けたから、別々に行こうと言ったらこういう役割を提案されたのだ。私にはなんのメリットもない条件でも飲むしかない。

 私は昔から何だかんだで真紘には逆らえない。


 やっと教室について隣の席に彼の鞄を放った私はグッタリと机に突っ伏した。
 1限目から体育だっていうのにもう疲れちゃったよ、もう。


 真紘が、何を考えてるのか、どこを見てるのか、何を見てるのか。
 時々本当にわからなくなる。


 彼のことを一番わかってるつもりだからいつも、一緒にいる。


 でも、もしかしたら一番わかってないのは私かもしれない。