イヤホンから落ちてくる音楽は、聴いていて心地よいわけではなかった。
私がいる場所は準急快速の電車の中、都合よく空いていた席に座り、携帯をいじるわけでもなく、音楽プレーヤーで爆音で音楽を垂れ流しながら、窓の外をぼんやりと眺めている。
乗車している客には大迷惑だろうが、今の私には関係なかった。そういう気分なのだ。

私はとてもイライラしていた。お月様が二日目だからとか、そんな理由。
よくわからないけれど、なんだか虫の居所が悪く、そこにタイミング悪く乗り換え前の電車で痴漢に遭遇した。
相手はいい年したオッサンで、構うのも面倒なので不愉快に思いながらも好きにさせていたら、オッサンはナプキンの存在に気付き、手をひっこめた。
その行動にさえ腹が立ったけれど、痴漢死ねよハゲ、なんて言えるはずもなく、そそくさと降車駅で降りたのだった。
気分はサイテー。

耳に流れてくる曲は、やたらハイテンションで憂鬱を叫んでいた。
手首を切るだの、唾を吐くだの、死にたいだの、そんな言葉ばかりを私に投げてきたけれど、今の私には、それが気持ちよかった。