隣りのお兄さん

「いや〜スマンスマン。ションベン中にホンマ」

 健吾さんは相変わらず笑いながらボクの後ろを付いてくる。
ボクの身長は172センチ。
男性の平均から考えると、別に大きくもなく小さくもなく……といった感じだ。
しかし、健吾さんは明らかにボクよりずっと大きかった。
 なんせ、見上げないと会話がしづらい。
どうやったらこんなに大きくなるんだろう。

「いえ、気にしないで下さいホント」

 ボクは何だかよそよそしくせざるを得なかった。
あんなものを見てしまったのだ。
当然といえば当然だろう。
なるべく、それに触れないようにした。
そうするのがいいだろうと誰でも思うのがふつうだ。
 しかし、健吾さんにふつうなんて通用しなかった。

「昨日はうるさくしてゴメンな〜」

「へっ……?」

「……だから、うるさくしてゴメンって」

「あの、何の話で……」

 ギロッ、と音がしそうな目つきで健吾さんがボクを睨みつけた。

「何やおまえ、しらばっくれる気ぃか?」

「え、ちょ、待ってくださいよ! 何の話……」

「よそよそしいねん。お? 見とんやろ、オレの痴態を」