隣りのお兄さん

でも、不安でもなんでもなかった。
そこらへんにいる男の人とは好きになる対象が違うだけ。
彼らは女の子を好きになったのだ。
ボクは、男の子を好きになったのだ。
どっちが合ってて、どっちが間違っているなんてないのだから。

「健吾さん、できましたよ♪」

 ボクはあの後から、健吾さんを下の名前で呼ぶようになった。
健吾さんはとっくにボクを下の名前で呼んでくれている。

「おう、じゃあ食べようぜ♪」

 今日の夕飯はハンバーグにコーンスープ、ご飯にポテトサラダだ。
全部、ボクのお手製。
ボクは料理をはじめ、家事が得意だからというと健吾さんはかなり喜んでくれた。
ボクも嬉しい。

「じゃあ……いただきますの前に」

 健吾さんはテーブルから身を出して、ボクの唇に健吾さんの唇を重ねてきた。

「……!」

「お食事前のキスは、約束だろ?」

 少し、意地悪そうに笑う健吾さんがボクは愛しくて仕方なかった。