隣りのお兄さん

「お〜い、優平! なにやってんねん。おまえ、はよこっちこんかい」
 健吾さんだった。

「あ、岩本さん……」

 健吾さんを確認した野球部っぽい3人組は、血相を変えてボクから離れた。
よく意味はわからないが、なんとか助かった。

「さぁさぁ、えぇからはよこっち来い!」

 健吾さんは太い腕でボクの細い腕をガッシリ掴み、そのまま食堂の方へ引っ張っていってしまった。

(あ……)

 トクン、と心臓がちょっと鼓動を早めた。

「優平はなに飲む?」

「あ、じゃあなっちゃんでお願いします……」

「オッケー♪」

 ガチャコン、ガチャコンとお金の入る音。
ピッ、と電子音がしてすぐにガコン!とジュースの缶が出てきた。

「ん! 飲めや」



「あ、ありがとうございます……」

 ボクは健吾さんからなっちゃんを受け取ると、プシュッと缶を開けた。健吾さんもニッコリ笑って、自分の買ったコーヒーをゴクッ、ゴクッと飲み干した。

「っかぁ! ウメェ!」

 嬉しそうに笑う健吾さん。

(……っカァ! うめぇ! やっぱサイコーやな♪)

 また、あのときの言葉が蘇ってきた。
 顔がみるみるうちに赤くなる。

「ま、安い入学祝いやけど、隣人同士仲良くしようや」

「あ、はい! よろしくお願いします」

 うんうん、とうなずいた後、健吾さんは真剣な眼差しでボクに言った。

「ほんで、本題に入るんやけど」