隣りのお兄さん

「……!」

 健吾さんの唇が、ボクの唇に重なっていた。

 チュッ……チュッ……。



「ふぁ、ふぃ、ふぃわもとふぁん……」

 岩本さん、と言おうとしたが、うまく言えない。
さらに、健吾さんはボクの口の中に舌を入れてきた。

「ンン……」

 そのまま、ボクは意識が遠のくような気持ちになって、健吾さんのなすがままになってしまった。
 健吾さんは唇から自分の唇を離すと、今度はボクの首筋の方へキスをしてきた。
クチュッ、クチュッと厭らしい音が文化住宅の敷地にこだまする。
今度は耳たぶの方へ健吾さんの口が忍び寄ってきた。

「アッ……アァ……」

 思わず、声を上げてしまった。
しかし、健吾さんは怯むことなく続ける。
やがて、パジャマのボタンをプチプチと外して、健吾さんの逞しい腕がボクの胸やおなかを撫で始めた。
 やがてボクは気づかないうちに、健吾さんと唇を自分から重ねあっていた。
健吾さんも喜んでくれているようだった。

 お互いに体を愛撫し、抱き合い、キスしあう。
ボクにとって、今までにない快感が自分を包み込んでいた。
 外を、何人かの人が歩いている。
おはようございます、なんて声も聞こえてくる。
その通りと文化住宅を遮る塀だけが、僕等の行為を見守っていた。