隣りのお兄さん

「ごめんなさい! ホントは……ホントは見るつもりなかったんです!」

 ボクはとにかく、今の自分の気持ちをすべて吐き出そうと思った。
こんな人に逆らえば、ひ弱な自分なんて一瞬で病院送りだろう。

「昨日、たまたま開いていた壁の穴から隣の人がどんな人か確認したくってのぞいたら、岩本さんが見えて、それで怖そうとか考えてたら急に股の間揉み始めて驚いて見てたら裸になっちゃって、えと、それでなんか自分で……あぁ〜えっと、その……」

 改めて健吾さんを見上げると、さっきより恐ろしい鬼のような形相で腕を組んで見下ろしている。

「ヒイイイイィィッ! ご、ごめんなさいごめんなさい! お願いです許してください!」

「……おい」

 ドスの利いた低い声。もう迫力充分すぎるのに、これ以上の恐怖はいらない。

「すいません! もうしません!」



「ちょっとこっち向けや」



「えっ……」

 健吾さんの左手で顎をクイッと上げられると同時に、ボクの口に何かが触れた。