「作っているのはねー チョコレートブラウニーよ 春樹さん、好きだから♪」



「はいはい……」



自分の母親ながら顔を赤らめて言うママは可愛い。



「杏梨も雪哉君にあげないの?」


胡桃を刻みながら聞く。



「……」



返事がない。



貴美香が手を止めて振り向いた。



「どうしたの?」



「あげたくない」



「あら?どうして?去年はあげたわよね?」



どうして娘は不機嫌なのだろうか。



貴美香は小首を傾げて考える。



朝食を食べていないせいかしら?



「今、お味噌汁を温めるわね」



一旦、チョコレートブラウニー作りから離れて朝食の準備を始める。



すると、杏梨も冷蔵庫からアジのひものと、納豆を出した。



あら、やっぱりお腹空かせていたのね?



貴美香は黙々と朝食の準備をする娘を見て微笑んだ。