「Love Step」バレンタイン過去編

「誰から聞いた?」



「……めぐみさん」



2週間ほど前に髪を切りに来て貰ったときに、そんな話が出たのだ。



めぐみにとってなんでもない話が、杏梨にとって、とても気にかかるものだった。



「はぁ~」


雪哉は思いっきり深いため息を吐いた。



「貰った後の事は聞かなかったの?」



「え?う、うん……」


まったく、最後まで話をしておいて欲しいものだ……。



心の中でめぐみを恨む。



「貰ったチョコはすべてスタッフにあげているんだよ?」



「え……」



「仕方なく貰うけど……本当に欲しい子からはもらえないんだ」



本当に欲しい子がいるの……?



気持ちが沈む。



「今日はまだ本当に欲しい子から貰っていないんだ」


鈍感な杏梨に気づいてもらう為に、もう一度言う。



出来上がったカフェオレのマグカップを杏梨の前に置きながら。



コーヒーの香ばしい香りと、ミルクと砂糖の甘い香りが杏梨の鼻をくすぐる。



「ママのブラウニーを食べよう?」


杏梨は立ち上がると食器棚の引き出しからフォークを2本持って戻ってきた。



フォークを雪哉に手渡す。



「……杏梨からは無いの?」