車の中は鼻をくすぐる香りが充満してて頭がクラクラする。

私は飲食店に勤めてから香水をつけなくなった。

だからなのか、香りを敏感に感じとってしまうんだけど、初めて嗅ぐ黒澤さんの香りは嫌じゃなかった。むしろ特別な気がして嬉しかった。

ほんのりと甘くて、爽やかな香りに私は酔いしれていた。
優しく抱きしめられてる感じがして幸せだった。



『どこか行きたいとこある?』

「ふえ?」


浸っていた私は突然かけられた言葉に反応仕切れなくて変な声をあげてしまった。


クスクスと笑いながらもう一度聞いてくれた。

『行きたいとこある?』


行きたいとこ?

えっ…考えてなかった……。

黒澤さんとのデートってフレーズで頭がいっぱいだったよぉ。
そうだよね、どっか行くんだよね。デートだもんね。

どうしよう。どこ?どこに行く?

えーっ、思いつかないよ…。



『俺に任せてもらって良い?』

「はっ、はい。お任せします。」

でもいいのかなぁ?
何もでてこなかった私に呆れてたりしない?

そんな事を考えながら恐る恐る黒澤さんを見ると笑顔で、私もつられて笑顔を返すと

『じゃー出発するよ。』


と、何でもないように車を走らせた。