「おお。圭一の事、覚えとったか。」

「今、同じ学校なんです。」

「へえ。こりゃ驚いた。世の中狭いもんだなあ。ほおー、そうか。圭一は元気かえ?」

「はい。…あの、それでフクさんの…。」

「おーおー、忘れるとこじゃったわ。」

そう言って仏壇の奥から、白い封筒をニ通取り出した。

一通には『誠へ』と書かれていて、もう一通には『聖良へ』と書かれている。

「…これ…?」

「…聖良ちゃんがここを離れた後、フクさん、体調崩してね。

その時、万が一の事があったら…とワシに預けよったんよ。分かっとったんかね、自分が死による事。

その封筒は、二人の孫になーんもしてやれんかったから、もし訪ねて来たら渡してくれ、ちゅうてね。

明日の朝、家に案内してやる。今日はもう夕方やけ、家に泊まるとええ。」