途中、何度か声をかけたけど、何も答えてはくれなかった。

怒ってるのかな…。

自転車置場に自転車を留めると、手首を掴んでぐいぐい引っ張って行く。

「な…何?」

転けそうになりながら階段を上がった。部屋に押し込めるように、乱暴に入れられ、後ろ手に鍵をかけた。

「痛い!もう少し優しくしてよ。」

「お前、いいご身分だな。自分の置かれてる立場、わかってんのか?」

「立場?」

「お前の元兄貴、ここへ来たぞ。連れて帰るってえらい剣幕で。いないのを確認すると帰ったけど、あれ、またきっと来るぞ。」

え…。どうしよう…。

「あ…私、今日ネットカフェで過ごすよ。」

取って返そうとドアノブに手をかけた。