春花side


「お前の彼氏、有名人になっちゃったよな」

今朝、うっすら笑いの上司に声掛けられた。

「まっ。少なからずお前のせいもあるんだろ?」

そう。
多分私のせい…だね。

「1人で原宿で調査ー???
危ないでしょ!
ナンパされたら?
誘拐されたら?
どうするのーーー!!!」

と、大騒ぎした葵ちゃん。私の仕事場にちょくちょく現れるようになった。

でも。あの風貌でしょ?
すぐに女子中高生中心に噂が広がった。

キャラ服着たイケメン『キャラメン』がいるとね。

そして今、私の少し前。
女子高生の手を両手で包み込むように握って、とびっきりの笑顔を見せている葵ちゃんがいる。

ズキン。
胸が痛んだ。

他の子に触らないでよ。
そんな笑顔見せないでよ。

そんな姿を見たくなくて、その場から静かに立ち去った。

はぁ。くだらないヤキモチだよね、これ。
でも、イヤなものはイヤだもん。

「あれ? 春花か? 久し振りだな」

ぼーっと立ってた交差点で懐かしい人に声を掛けられた。

「え?先輩!?」

そこには。高校時代より少しだけ大人びた笑顔を見せる元カレがいた。

部活の先輩。
かっこいい笑顔。
いっぱいドキドキしたっけ。

当時の甘酸っぱい恋を思い出した。