そう、だけどこれは現実で。
クラスの男子達とワイワイ騒いでいる、今やクラスの中心的存在の彼はあたしの目の前にいる。
譲は、高校二年になって同じ学校に編入してきた。
本当にびっくりした。
もう二度と会うことのない人だと思っていたから。
どうしてよりによってこの学校なの?
譲の姿を久しぶりに見たあたしは、すぐに昔の出来事を思い出した。
忘れたい人。
でも記憶のどこかで存在している人。
色んなことを考えていると、譲と目が合ってしまった。
『千紗!』
「な、なに?」
譲がこの学校に、このクラスにやってきて半年以上経ってるけれど、今日初めてまともに目を合わせて会話した。
気まずいから、いつもつい避けてた。
『今日一緒に帰ろうな?』
「え、ちょ、なに?いきなり」
驚くあたしに対して譲はにっと笑ってて。
また輪の中に戻って行った。
いきなり、なに?
突然すぎて、なにも言えなかった。
断れなかった。
昔の事で何か言われるのかな。
何を話せばいいの?
何事もなかったかのように、できるかな。
はぁ。
譲、何であたしの前に再び現れたの?
単なる偶然?
だとしても、こんな偶然やめてよ。


