だって、それじゃあたし……


なんのためにたぬき寝入りしたのか……



「……意味ないよ……」


「ん?」


「……ハル兄って、やっぱりSだ」



つぶやいたあたしに、くすくすと笑う声。



「仕返しだ」


「え?」


「寝たふりしてオレを困らせたことへの仕返し」


「……」


「おあいこだからな」



なんか、同じことを聞いたことがある気がする。



そうだ。


再会一発めのあの日、ハル兄のおでこに赤いあざを作ってしまって。


そのあと、デコピンされたんだっけ。



「……負けずキライでしょ、ハル兄」


「別に」



まだくすくす笑うハル兄に、あたしも仕方なくほほ笑んだ。



たぶん、ヘンテコな顔で。