「がんばれよ、眞緒」



――ぽん、ぽん。


あたしの頭に2回、手をおろして。


ハル兄のカラダは、再びホームに戻っていく。


……スローモーションみたいに。



そして、すーっと扉が閉まった。



「あっ……」



あわてて窓に手をつけて、手を振るハル兄を凝視した。



“おまじないだ”



なんて。


放心するあたしに告げている。


パーだった指先を、Vの字に立てながら。



「もう……もうもうもうっ……ズルイよ、ハル兄」



動きだした窓に、あたしはおでこを押し付けた。



「……あたし、ホントにがんばるからねっ」



姿が見えなくなる直前に叫んだ言葉は、伝わったかどうかは分からない。



でも、
こくんとひとつ、うなずいてくれてたように思う。



「……大好きっ……」って言葉に、


白い息を吐いて、優しい笑顔で見送ってくれながら。