「話はそれだけ。あ、あたしと会ったことは陽斗には黙っておいてね? いろいろ心配かけるのもイヤだから。あなたもイヤでしょ?」



じゃあヨロシク、


そう言ってきびすを返した彼女だったけど。



「そう言えば、」



振り返った口元には、笑みが浮んでいた。



「あたしと陽斗のキス、見てたでしょ?」


「……え?」


「そういうことだから」




取り残されたあたしは、しばらく足が動かなかった。



北風が制服のスカートをはためかせても、冷たさを感じない。



彼女が消えた通りの向こうにぼんやりと目を向けたまま、


弱い街灯の下で、立ちつくすことしか出来なかった。